商品を返還してもクレジット代金を全額払う必要があるのでしょうか?
次のような事例を考えてみましょう。
社会人になった記念に、ホームシアターセットを月1万円の20回払い、ボーナス時10万円加算のローン契約を結んで購入しました。
5回の月払いを終えましたが、不況のためにボーナスがカットされることになり、ボーナス払いの10万円が払えませんでした。
すると、電気店か契約書に基づいてホームシアターセットを差し押さえた上、「違約金として残りの代金を全額一括で支払ってもらう」と通告してきました。
この要求に応じなければならないのでしょうか。
違約金にも上限があるので不当な請求は拒絶できます。
クレジット契約やクレジットカードを利用した取引では分割払いで代金を支払うケ-スも多いでしょう。
決められた支払時期に返済することは購入者の義務であり、支払の遅れは契約に反する行為です。
一方、購入者の側からみると、購入者はそれぞれの代金の支払時期までは支払をする必要がありません。
この債務者に認められている利益のことを「期限の利益」といいます。
但し、多くのケ-スでは購入者が決められた時期までに債務を支払わなかった場合には、クレジット会社か残代金を一括して請求できることが契約で定められています。
事例で残代金を一括請求されたのはこのためです。
契約解除に対する一定の制限
特別な事情があったとはいえ、ローン返済を滞らせたあなたには、債務不履行があったことになります。
この場合、販売店やクレジット会社は契約を解除し、損害賠償を請求することができます。
しかし、何の制約もなく損害賠償を認めると法律に詳しくない一般消費者が多大な被害を受けるので、割賦販売法では契約の解除と損害賠償について一定の制限を設けています。
これによると、支払が遅れた場合の契約解除は、20日以上の期間を定めて支払いを求めで、それでも履行されなかったときに初めて可能となります。
また、損害賠償の額としては、以下の額に契約解除の日からかかる遅延損害金(法定利率により計算)をそれぞれ加算した金額以上の支払いを求めることはできません。
- 商品などが返還された場合は通常の使用料の額
- 商品などが返還されない場合は販売価格に相当する額
- 商品などの引渡し前の場合は通常契約に要する費用の額
すでに支払った割賦金がある場合にはその額も控除されます。この規定は契約書に損害賠償に関する特約があっても適用されます。
本ケ-スの場合も上記①のとおり、商品を返還すれば、損害賠償額は使用料限度に制限されます。
したがって、あなたが残代金の一括返済の要求に応じる必要はありません。