てるみくらぶ破産で旅行代金弁済制度拡充案(2017年9月8日)
2017年9月8日、石井国土交通大臣は記者会見で、格安旅行会社「てるみくらぶ」の経営破綻を受けた再発防止策として、客が旅行会社に前払いした代金を弁済する制度の拡充案を公表しました。
今年3月に経営破綻した「てるみくらぶ」を巡っては、破綻の直前までツアーの販売を続け、利用者が前払いした最大で99億円に上る代金のほとんどが返還されない見通しで、8万人から9万人に影響が及んでいます。
このため観光庁は、新たな対策で旅行会社が経営破綻した際に業界団体を通じて前払いした代金を弁済する制度をいまよりも拡充します。
具体的には、資金確保のため旅行会社が破綻に備えて支払う分担金を平均1割程度増額する案を検討しています。
観光庁は今後、制度改正案の詳細を詰めます。
制度見直しに際し、破綻時に被害が大きくなる海外旅行への補償を拡充する必要があると判断しました。
分担金は、2018年4月から海外旅行の取引高に応じた額を追加して集める方向で調整します。
現在の弁済制度は、各旅行会社が日本旅行業協会などに分担金を積み立て、破綻した際は積立額に応じた上限の範囲で代金を返還する仕組みとなっています。
てるみくらぶの弁済額は、前払い代金約99億円の1%程度に当たる総額1億2千万円にとどまる見通しで、利用者保護に大きな課題を残しました。
分担金の増額とともに、てるみくらぶが未加入だった任意の保証金の上乗せ制度への参加を促すことで、同様の破綻が起きた場合、弁済額を現在の3倍程度の3億数千万円に引き上げることを目指します。
再発防止策ではほかに、旅行会社の経営状況の監視を強化するため、2018年4月から各社に観光庁への年1回の決算書提出を義務付けます。
また、てるみくらぶが破綻直前まで代金前払いを促す広告を出していた問題では、広告や募集に前払い金の使い道を明記するといった指針を業界団体が策定します。
観光庁は、各社に対策を徹底させることで再発を防ぎ、利用者の保護に取り組む考えです。
観光庁「新たな時代の旅行業法制に関する検討会 経営ガバナンスワーキンググループ」のとりまとめの方向性(2017年9月8日)
(以下観光庁HP参照)
1 企業ガバナンスの強化
(1)経営状況の把握
- 募集型海外企画旅行を行う事業者(第1種旅行業者)は、決算申告書等を観光庁に毎年提出〔従来は5年に一度提出〕
- 純資産に対して取引額が過大な会社に対して、経営状況の調査を実施〔新規〕
(JATA(日本旅行業協会)、ANTA(全国旅行業協会)
(2)通報窓口の設置
- 企業内部・他企業からの通報を受け付ける通報窓口を設置(第三者機関)〔新規〕
- 通報の内容に応じて、同機関が調査を実施。
(3)登録更新の際の内容確認の厳格化
旅行業の登録更新(5年に1度)の際に、公認会計士等のチェックを受けた書類を提出するよう義務づけ〔従来はチェックなし〕
(4)広告募集のあり方の見直し
数100日前からの「現金一括入金キャンペーン」のような不適切な広告を防ぐことをガイドラインに明記〔新規〕
(5)前受金の使途の明記
旅行出発の60日より前に、前受金を20%以上受け取る場合、その使途等を具体的に広告等に記載することをガイドラインで徹底〔新規〕
(6)旅行業者の宿泊施設等への支払い時期の適正化
前受金は、(5)で広告等で記載された使途に応じて旅行業者から宿泊施設等に適切な時期に支払われるようガイドラインで徹底〔新規〕
2 弁済制度のあり方の見直し
(1)保証制度の見直し
- 国による強制加入の保証制度である弁済業務保証金の引き上げ
(小規模の場合は対象外) - 民間による任意の保証制度であるボンド保証制度への加入を促進し、消費者に分かりやすく表示
(大規模に募集型海外企画旅行を実施している場合)
(2)保険商品の活用の検討
旅行中に旅行業者の経営破綻等により、旅行者において追加支出が発生した場合に保険金が支払われる特約の開発について、保険会社と検討