中小企業再生支援協議会
中小企業再生支援協議会とは、中小企業に対する再生計画策定支援等の再生支援事業を実施するために、経済産業大臣から認定を受けた商工会議所や商工会連合会などの認定支援機関に設置される公的組織です。
私的整理手続のうち、根拠法令に基づき制度化され、公正中立な第三者が関与して行われる手続のことを「準則型私的整理手続」といいます。
準則型私的整理手続の種類は、以下になります。
- 事業再生ADR手続
- 中小企業再生支援協議会による再生支援スキーム
- REVIC(地域経済活性化支援機構)による再生支援スキーム
- 私的整理ガイドライン
- 特定調停等
この記事では、中小企業再生支援協議会による再生支援スキームについて、説明します。
この記事で書かれている要点(目次)
1.中小企業再生支援協議会とは
中小企業再生支援協議会とは、中小企業に対する再生計画策定支援等の再生支援事業を実施するために、経済産業大臣から認定を受けた商工会議所や商工会連合会などの認定支援機関に設置される公的組織です。
中小企業再生支援協議会では、事業再生に関する知識と経験を有する専門家(弁護士、金融機関出身者、公認会計士、税理士、中小企業診断士等)が統括責任者(プロジェクトマネージャー)、統括責任者補佐(サブマネージャー)として常駐し、中小企業からの相談を受け付ける体制を整えています。 中小企業再生支援協議会の再生支援事業には、第一次対応と第二次対応があります。
第一次対応では、中小企業再生支援協議会が中小企業から事業再生に関する相談を受け、事業再生に関するアドバイスをしたり、関連機関などを紹介したりします。
弁護士等の専門家派遣なども行っています。
第一次対応をした中小企業のうちで一定の要件を充たしている企業に対しては、第二次対応が行われます。
第二次対応では、中小企業からヒアリングをした上で、債権者である金融機関等に対して協力依頼をし、デューデリジェンスを行って事業再生計画を立案します。
そして、債権者会議を開催して債権者による事業再生計画案の決議を行い、債権者の同意を得た場合には、当該計画に基づく事業再生が遂行できるように支援を行います。
2.中小企業再生支援協議会の特徴
中小企業再生支援協議会の特徴は、以下です。
金融機関にとって、公平・中立な中小企業再生支援協議会および専門家の調査検証を経ていることから、再生計画案の信頼性が高まり、協力し易くなると考えられます。
また、会社、債権者のいずれにも一定の税務上のメリットがありえますので、中小企業再生支援協議会の活用により事業再建がよりスムーズに実現する可能性が高まります。
メリット
- 対象債権者に一般の取引先債権者は含まれませんので、取引債権者の権利の変更の予定はなく、取引を継続しながら行うので、商取引債権者に影響が少ないです。
- リスケジュール、債務の劣後債務化や債務の株式への変換といった多様な再生手法が活用できます。
- 企業名の開示がありません。法的な手続きと比べ秘密性が高く、企業価値が毀損される可能性が低いです。
- 各地の保証協会と連携があるため、保証協会の協力が得られやすいです。
デメリット
- 対象債権者の同意がないと再生計画が成立しません。
- 地域によって運用が統一されていません。
- 債務者主導というより、協議会主導となり、当初の予測とは異なる方向に進んでしまう可能性があります。
3.中小企業再生支援協議会の利用状況
利用できる企業は、産業活力の再生および産業活動の革新に関する特別措置法2条17項にいう「中小企業」です。
製造業・卸売業・飲食店業・小売業等多くの業種の企業が利用できます。
中小企業が私的整理を行う場合には、最も利用しやすいルールであるといえるでしょう。
但し、それでも、小規模事業者には費用や手続面で利用が容易ではないのが現状です。
手続きの時間
中小企業再生支援協議会の手続に要する時間は、少なくとも半年程度を要します。
事前に会社において再生計画案を策定しているなど、事前準備がなされていれば、期間の短縮を期待できます。
再生計画案の策定や金融機関の説得に時間がかかり、期間が延びることもあります。
手続きの費用
中小企業再生支援協議会は、再生計画案の調査検証において弁護士および公認会計士等専門家に依頼しますので、この専門家費用は会社において負担する必要があり、規模や会社での事前準備の程度、複雑さなどによって左右されます。
一定の補助もありますので、具体的な金額の見込みや目安については、中小企業再生支援協議会にご相談ください。
4.手続きの流れ
中小企業再生支援協議会の手続きの流れは、以下です。
①第一次対応(窓口相談)
各都道府県に設置されている中小企業再生支援協議会に連絡し、窓口相談をします。
中小企業再生支援協議会では企業・事業再生について詳しい専門家(金融機関出身者や中小企業診断士、税理士等)が企業からの相談に対応してくれます。
会社が窮境に至った経緯や現状を決算報告書や月次試算表などを提出して中小企業再生支援協議会に説明すれば、今後の進め方についてアドバイスを受けることができます。
②第二次対応(再生計画策定支援)
窓口相談で中小企業再生支援協議会での支援が妥当であると判断されると、再生計画策定支援に移ります。
但し、自分の事業計画は自分でしか作れませんので、アドバイスは受けられるものの、あくまで再生計画案を策定するのは会社自身となります。
再生計画案の策定には難しいところがありますが、会社が弁護士や公認会計士に依頼して助力を得ることも考えられますし、金融機関(主にメインバンク)の協力が得られることもあります。
また、再生計画案を策定する前提として、会社の現状等を詳細に把握・分析することが必要ですので、デューデリジェンスといわれる財務調査・事業調査も必要となります。
③再生計画案の調査・検証
再生計画案を策定すると、中小企業再生支援協議会は、専門的知見を有する弁護士および公認会計士等の外部専門家の協力のもと、提出された再生計画案の合理性や公正性等を調査・検証します。
この調査・検証において、再生計画案に修正するべき点があると指摘されたら、適宜修正して再度調査・検証を受けます。
④再生計画案の承認
再生計画案に特段の問題がないことが確認されると、金融債権者会議において金融機関に再生計画案の是非を問い、金融機関が全員この再生計画案を了解すれば、この再生計画案が成立します。
その後、会社は、再生計画に定めた経営改善施策に努力し、また返済計画に基づく返済を行います。
金融機関は金融支援(リスケジュール、デット・デット・スワップ(DDS)、デット・エクイティ・スワップ(DES)、債権カットなど)を実行します。