特定調停スキーム

特定調停とは、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(特定調停法)に基づく、裁判所における民事調停手続の一種です。
特定調停は話し合いを基本とする手続であるため、私的整理に近い性質を持っているといえます。

特定調停の多くは個人債務者の債務整理として用いられていますが、近時は、事業再生に活用されることも増えてきています。
特定調停スキームは、金融円滑化法の終了に伴う対応策の一つとして、日本弁護士連合会が中心となり策定したものです。

平成25年4月末の中小企業金融円滑化法終了後も、倒産の危機に瀕している中規模以下の中小企業は多数存在しており、私的整理による事業再生のニーズが高まっていたことを契機として、最高裁判所、日本弁護士連合会、中小企業庁等の関係団体の調整を経て、平成25年12月、中規模以下の中小企業の再生を図るプラットフォームとして、特定調停の事業再生型運用が開始されました。
私的整理手続のうち、根拠法令に基づき制度化され、公正中立な第三者が関与して行われる手続のことを「準則型私的整理手続」といいます。
準則型私的整理手続の種類は、以下になります。

  • 事業再生ADR手続
  • 中小企業再生支援協議会による再生支援スキーム
  • REVIC(地域経済活性化支援機構)による再生支援スキーム
  • 私的整理ガイドライン
  • 特定調停等

この記事では、特定調停スキームについて、説明します。

1.特定調停とは

特定調停は、裁判所において行われる民事調停手続の一種です。
民事調停の特例として、「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(特定調停法)」に定められています。
具体的には、特定調停とは、支払不能に陥るおそれのある債務者等について、債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進することを目的とする民事調停の特例として設けられた手続のことをいいます。
特定調停は裁判手続ですので、私的整理そのものとは言えません。
但し、特定調停は、訴訟と異なり、当事者間での話し合いを基本とする手続です。
したがって、私的整理に類似する性質を持っています。
また、特定調停はこれまで個人が多く利用していましたが、法人の利用も可能とされています(特定調停法2条1項)。
金融円滑化法の終了に伴い、その対応策として、日本弁護士連合会(日弁連)は、平成25年3月に、特定調停を利用して中小企業(特に小規模事業者)が私的整理を行うための「金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキーム利用の手引き」を公表しました。
この特定調停スキームは平成26年に改訂され、さらに、経営者保証に関するガイドラインが公表されたことを受け、「経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキーム利用の手引き」も公表されています。
現在、この特定調停を利用した私的整理スキームが注目されており、今後は、準則型私的整理の利用が進んでいく可能性があります。
特に、事業再生ADR、中小企業再生支援協議会の再生支援事業、地域経済活性化支援機構の再生支援事業は、小規模事業者には利用が難しい面が多いことから、中小企業・小規模事業者による特定調停の利用が増える可能性があるでしょう。

2.特定調停スキームの概要と経緯

特定調停スキームの概要と経緯は、以下です。

特定調停スキームとは

特定調停とは、裁判所で行う民事調停の一つであり、「経済的に破綻するおそれのある者」が経済的な事業再生をはかるために金銭債務の調整を求めて申し立てる事件です。
これは個人でも法人でも申立をすることができます。
法人については、事業の再生が必要となる場合に利用できる選択肢として「特定調停スキーム」が日本弁護士連合会(日弁連)より策定されています。
特定調停スキームとは、経営困難な状況に陥った会社が、会社更生法や民事再生法によらずに債権者との話し合いにより、債務の減免、猶予などを行い、事業の再建をはかる制度です。
特定調停スキームは、弁護士などのサポートで再生計画案を策定して特定調停を行います。
個人の債務者が行う特定調停との違いは、特定調停スキームの場合は調停期日前に金融機関との話し合いで合意を取り付けておくという点です。

特定調停スキーム策定の経緯

特定調停スキームが策定されたのは、金融円滑化法の終了という背景がありました。

金融円滑化法とは、中小企業などの債務者が銀行等の金融機関に「返済が困難なので相談に乗ってほしい」といった申し入れをした場合に、経営者保証ガイドライン手引きに基づき、経営者や保証人のために、なるべく金融機関側は条件変更などで柔軟に対応するよう努力しなければならないと定められた法律です。
中小企業金融円滑化法は時限立法(期間の終わりが決まっている法律)とされており、平成25年の3月に金融円滑化法終了となりました。
しかし、依然としてリーマンショックや東日本大震災の影響によって困窮する事業者が多く、保証債務整理方法として特定調停スキームの活用が推奨されるようになりました。

3.特定調停スキームのメリット・デメリット

メリット

特定調停スキームのメリットは、以下です。

会社の信用に傷がつきにくい

中規模以下の中小企業は、事業規模、事業価値がいずれも小さいことから、ひとたび風評被害が生じると、事業再生を進めるどころか、事業継続すら困難になってしまいます。
再生手続等の裁判所手続きを利用する場合、どうしてもそれが大がかりで、かつ公になってしまうため、申立人となる会社の信用力低下につながってしまいます。
その点、特定調停は裁判所で行うものの、債権者との個々の交渉による私的な手続きになるためそのような心配が少ないと言えます。

手続きにかかる期間が短い

大体半年から1年程度で終了するスケジュールを想定しています。
調停自体は2回程度で終了する想定になっていますが、その前段階として、弁護士による「経営改善計画案」など各種書類の作成や金融機関との事前調整が必要になります。

調停そのものよりもむしろ準備段階に時間がかかると考えておいた方がよいでしょう。

債権者の合意が得られやすい

特定調停スキームでは、裁判官と裁判所が選任した調停委員で構成する調停委員会が仲裁に入ります。
そのため手続きの透明性と公平性が担保されており、他の債務整理手続きに比べて、債権者の合意を得やすいと言えます。

いわゆる「17条決定」を利用できる

各金融機関に対し、個別に任意のリスケジュールを交渉しようとしてもなかなか応じてもらえないことが考えられます。
しかし、特定調停スキームでは全債権者の同意が得られない場合には「民事調停法17条決定」を利用することができます。
民事調停法17条は、裁判所が、民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のための公平に考慮し、一切の事情をみて、職権にて、当事者双方の申立ての趣旨に反しない程度で事件の解決のために必要な決定をすることが出来ると規定しています。
この決定の告知から2週間以内に異議がなければ当該調停条項は裁判上の和解と同一の効力を生じます(民事調停法18条5項)。
これは、裁判所により一定の調停条項を導き出し、判決と和解の中間のような位置づけで、これに法的な拘束力を持たせることができるというものです。
再生債務者の提示してきた条件に賛成はできないが、反対まではしないといった債権者がいる場合には有効な方法です。

デメリット

特定調停スキームのデメリットは、以下です。

  • 金融機関が合意しなければ、特定調停が成立しない。
  • 特定調停を申し立てる前に、専門家と協力して事業再生計画を立てなければならない。

4.特定調停スキームの対象となる案件

概ね、以下のいずれの要件をも満たす案件が対象となると想定されています。

債務者の事業規模

概ね、年間売上(年商)20億円以下、負債総額10億円以下の企業

内容

次のアないしエのいずれにも該当するものであること。なお、保証人については下記オに該当するものであること。

ア 最低でも約定金利以上は継続して支払える程度の収益力を確保していること

イ 法的再生手続(民事再生など)が相応しい場合でないこと

即ち、次のいずれにも該当しない場合であること

  1. 手形不渡りが出ることが予想されること
  2. 個別の債権回収行為を防ぐ必要があること
  3. 金融機関間の意見・利害の調整が不可能又は著しく困難であること
  4. 否認権行使や役員の責任追及などの問題があること

ウ 一般的に、私的再生手続が相応しいと考えられる場合であること

即ち、次のいずれにも該当する場合であること

  1. 債務者の事業に収益性や将来性があるなど事業価値があり、関係者の支援により再生の可能性があること
  2. 過剰な債務が主な原因となって経営困難な状況に陥っており、自力による再生が困難であること
  3. 法的再生を申し立てることにより当該債務者の信用力が低下し、事業価値が著しく毀損するなど、再生に支障が生じるおそれがあること
  4. 法的再生の手続によるよりも多い回収を得られる見込みがあるなど、金融機関にとっても経済合理性があること
  5. 営改善計画案に対する金融機関の同意が見込まれること

エ 次のいずれかの場合に該当すること

  1. 経営改善計画案の内容として、既存債務につき、金融機関による全部若しくは一部の免除、弁済期限や利息の変更(リスケジュール)、又は、資本性借入金への変換(DDS)が必要と予想されるものであること
  2. 債務者が信用保証協会による保証付融資を利用しており、経営改善計画案の内容として、その求償権放棄が必要と予想されるものであること
  3. その他、経営改善計画案に対する金融機関の同意を得るために特定調停手続が必要と見込まれること

オ 保証人に関する調停条項案に対する各金融機関の同意が見込まれること

5.手続きの流れ

特定調停スキームの手続きの流れは、以下です。
弁護士が税理士・公認会計士等と協力し、調停申立て前に、財務・事業に関するDDを実施するなどして経営改善計画案を策定し、金融機関と調整して、同意の見込みを得る必要があります。
同意を得る見込みのない事案については、特定調停スキームにはなじまないことから、他の私的整理手続や法的再生手続を検討することが必要です。

①弁護士との打ち合わせ

個人で行う特定調停は債務者が自力で申し立てますが、特定調停スキームではほとんどの場合、弁護士が代理人となります。
債務者が弁護士に相談すると、まずは申し立てに向けた打ち合わせを行います。
弁護士は公認会計士や税理士などと連携しながら、債務者の企業に対して財務状況のヒアリングや事業内容の調査など(デューデリジェンス)を実施します。

②金融機関との交渉は申立て前に

また、特定調停スキームでは申し立て前に金融機関と事前交渉を行います。
これも個人の特定調停とは異なる点です。
債務者は弁護士らの協力を得て経営改善計画案を作ります。
そして計画案について金融機関と交渉し、合意が得られる計画へと練り直していきます。
最終的に合意に達したら、債務者は特定調停での合意案も作成して金融機関の了承を得ます。
調停がスムーズに成立するための準備です。

③調停の申立てと調停期日

申し立て先は、原則として債権者である金融機関の所在地を管轄する簡易裁判所です。
調停の期間は、事前に合意ができているため通常は短期間で終わり、基本的には調停期日1〜2回で済みます。
成立すれば調停調書が作成されます。

第1回調停期日

  1. 調停委員による各金融機関の意向確認
  2. (場合によっては)調停成立、民事調停法17条決定

期日間

期日間に調整が必要な場合には、代理人弁護士が各金融機関との間で協議、調整

第2回調停期日

  • 調停成立
    債務免除に関する税務上の処理、あるいは、信用保証協会による求償権放棄の処理のため、調停調書と経営改善計画の一体性が確保される必要ありますので、調停調書に経営改善計画を特定してもらうことが必要です。
  • 民事調停法17条決定
    決定の理由中で、経営改善計画案の合理性が示される必要ありますので、17条決定中に経営改善計画の特定をしてもらうことが必要です。
    その旨を調停主任裁判官に伝えておくことが望ましいと考えられます。

 

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