銀行カードローンの増加と多重債務の問題
最近、銀行のカードローンが増加しています。
2017年5月の残高は、過去最高の約5兆9千億円とされています。
これとともに、多重債務の問題を抱える人が多くなっています。
銀行カードローンは総量規制の適用外
銀行のカードローンは、無担保で使途の制限がない融資で、金利は個人の信用力などに応じ年1.8~15%程度となっています。
従前、個人向けの無担保ローン市場は、主に消費者金融やクレジットカード会社など貸金業者が行っていましたが、2010年に改正貸金業法が完全施行され、貸金業者は利用者の年収の3分の1までしか貸せない総量規制がかかりました。
但し、この総量規制は、銀行には適用されません。
これにより、貸金業者の融資が減少する一方で、貸金業法が適用されない銀行はカードローンの事業を拡大してきました。
近時のマイナス金利で企業向けの貸出金利ざやが縮小し続けるなかで、安定した金利収入を確保できるためだと考えられています。
特に、消費者金融などノンバンクが、銀行と提携して、個人ローンの損失リスクを肩代わりする信用保証を拡大しています。
つまり、銀行が利用者に対して融資を実行し、ノンバンク(消費者金融)が返済を保証し保証料を受け取るという仕組みです。
利用者が返済できなかった時の貸し倒れのリスクを、ノンバンクが負っています。
これにより、貸金業者にとっては、自ら貸せない相手であっても、総量規制が適用されない銀行が貸すことにより、保証料(実質上、金利のうちの数%)を受け取る運用をしています。
よって、ノンバンクで借りられなかった人が、銀行カードローンでは借りられる状況が生じ、現実に年収の3分の1を超えて融資する銀行が相当数あると考えられます。
この点に関して、銀行のカードローンは、銀行員が直接審査せず、ノンバンク規制の対象外なので融資審査が甘くなると指摘されています。
今後、銀行のカードローンについて、過剰な貸し付け、多重債務の拡大につながらないよう、規制の見直しが求められると思われます。
貸金業法の総量規制とは
上記の貸金業法の総量規制に関して、詳しく説明します。
貸金業法の総量規制とは、借り過ぎ、貸し過ぎを防ぐために設けられた規制です。
具体的には、貸金業者からの借入残高が年収等の3分の1を超える場合は、新たな借入れはできなくなるという内容です。
年収等とは、個人の年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額を合算した額のことをいいます。
複数の貸金業者から借入れがある場合は、全て合算した金額が、年収等の3分の1を超えるかどうか審査します。
例えば、年収300万円の方に貸金業者が貸付けることができる金額は、100万円が上限となり、複数の貸金業者から借入れがある場合でも合計100万円が上限となります。但し、総量規制の除外、例外となる貸付けもあります。
年収等の3分の1を超える借入れがある場合は、貸金業者は原則として新たな貸付けを行いませんので、借入額が年収等の3分の1以下になるまで貸金業者からの借入れは制限されます。
総量規制は、貸金業者からの借入れを対象としており、銀行の貸付けは貸金業法の規制(総量規制)の対象外です。
したがって、銀行等からの借入れを合わせた結果、借入残高が年収の3分の1を超えていたとしても、ただちに総量規制には抵触しません。
また、銀行のカードローンも、一般の銀行等の借入れ同様、総量規制の対象とはなりません。
※ 参考条文 貸金業法第13条の2
(過剰貸付け等の禁止)
第十三条の二 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、前条第一項の規定による調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。
2 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に三分の一を乗じて得た額をいう。次条第五項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。
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