破産手続開始決定|尼崎の債務整理に強い弁護士
破産手続開始決定とは?
「破産手続開始決定」とは、債務者(破産申立人)について破産手続を開始する旨の裁判所の決定のことです。
2004年の新破産法の制定の前は「破産宣告」と規定されていました。
自己破産の手続は、裁判所による破産手続開始決定によって開始されます。
破産手続開始決定は、「決定」という形式の裁判です。
破産手続開始決定の裁判書には、「債務者について破産手続を開始する。」という主文とともに、支払不能等の事実が理由として記載されます。
決定がなされた年月日時も記載されます。
破産手続開始決定により、様々な法律上の効力が発生します。
破産開始決定が出るのは?
破産手続開始決定がなされるためには、次の要件が必要となります。
- 破産手続開始原因があること(支払不能など)
- 破産障害事由がないこと
- 破産手続開始の申立てが適法であること
これらをすべて満たせば、破産手続開始決定がなされることになります。
以下、ご説明します。
破産手続開始原因(支払不能)
破産手続開始原因とは、破産手続が開始される原因となる事実のことをいいます。
具体的には、破産法上、「支払不能」と「債務超過」が破産手続開始原因とされています。
個人の破産の場合には支払不能のみが、法人の破産の場合には支払不能と債務超過の両方が破産手続開始原因となります。
破産手続開始原因となる「支払不能」とは、「弁済能力の欠乏により、破産者が弁済期の到来した債務を、一般的かつ継続的に弁済することができないと判断される客観的状態である」と言われます。
支払不能かどうかは、破産手続開始の裁判の時点で判断されます。
支払不能であるというためには、以下のような要件が必要です。
- 弁済能力が欠乏していること
- それにより、弁済期の到来した債務を、一般的かつ継続的に弁済することができないと判断される客観的状態にあること
破産障害事由がないこと
破産障害事由とは、それがあると破産手続を始めることができなくなる事由のことです。予納金が納付されているかどうか、他の倒産手続が開始されているかどうかなどがこれに当たります。
破産手続開始の申立てが適法であること
破産手続開始の申立ては法律上の手続ですので、適法であることが必要です。
適法性は、申立てをした人に申立権があるかどうか、破産者とされる人に破産能力というものがあるかどうかなどによって判断されます。
破産開始決定の効力は?
破産手続開始決定がなされると、以下のような法的効力が発生し、また付随的な手続も開始されます。
- 破産管財人が選任され、破産者の財産の管理処分権が破産管財人に専属する。
- 破産者は自分で財産を処分することができなくなる。
- 破産債権者は、破産手続によらないで権利行使することができなくなる。
- 破産者に説明義務や重要財産開示義務などの法的義務が発生する。
- 破産者の居住が制限される(居住制限)。居住移転には許可が必要となり(但し、引越などは許可が出ますし、旅行についても正当な理由があれば許可が出ます。旅行につき許可が必要なのは、一般的には「国内旅行は2泊3日以上で、海外旅行は全て」とされています。)
- 破産者の郵便物が破産管財人に転送されるようになる(通信の秘密の制限)。隠し財産がないか、新たな債権者がいないかなどを調べるためです。
- 一定の資格等を利用した仕事ができなくなる(資格制限。保険外交員、警備員、宅地建物取引主任者、旅行業務取扱管理者、証券外務員など)。
- 破産をしたことが官報に公告される。
※破産手続が開始されたことは、官報によって公告されます。官報とは、国が刊行している機関紙で、法律や条例の制定・改正など国民に広く知らせる事項を掲載したものを言います。公告とは、公に告げることです。国が、官報等を使って、特定の事項を広く国民に知らせることを言います。
同時廃止事件とは?管財事件とは?
自己破産手続きは「同時廃止」「管財事件」の2種類あります。
同時廃止事件とは
通常、裁判所は、破産手続開始決定を行うと同時に、破産管財人を選任し、この管財人が破産者のすべての財産を調査、管理し、これをお金に換えて債権者に分配することになります。
但し、債務者の財産が少なく、破産管財人を選んで財産を金銭に換えても、破産手続を進めていく上で必要な費用(破産管財人の報酬など)を払うことすらできないと予想される場合には、裁判所は、破産手続を開始するという決定をしても、破産管財人を選ばずに、直ちにその手続を終わらせる決定をします。
このように、破産手続の開始と同時に手続を終了(廃止)する場合を「同時廃止型の破産手続」といい、同時廃止となる破産事件を「同時廃止事件」といいます。
管財事件とは
破産手続とは、自分の財産や収入だけでは債務(借金)の全額を支払うことができなくなった場合(これを「支払不能」といいます。)に、破産管財人と呼ばれる弁護士が、債務者の財産を他人に売ったりするなどして金銭に換えた上で(これを「換価」といいます。)、その金銭を債権者全員に公平に支払い(これを「配当」といいます。)、債務(借金)を清算する手続です。
このように、破産管財人を選んで手続を進める場合を、「管財型の破産手続」といい、破産管財人が選ばれる事件を「管財事件」といいます。
同時廃止事件と管財事件の区別
自己破産手続きは「同時廃止」「管財事件」の2種類あります。
破産者の財産が少なく、これをお金に換えても破産手続の費用にも足りないことが明らかな場合は、裁判所は破産管財人を選任せず、破産手続開始決定と同時に破産手続を終了させる決定をします。
これを破産の「同時廃止」といい、この場合には、債務者の財産を管理したり、お金に換えたりする手続は行われません。
破産手続は終わり、免責手続に入ります。
同時廃止であれば期間も費用もそれほど大きな負担にはなりません。
そして、概ね、
- 財産が20万円以下
- 現金が99万円以下
- 免責不許可事由にあたらない
という条件を満たせば、同時廃止と判断される可能性が高いです。
但し、実際は、上記の条件のほか、個々の事案に応じて、裁判所が諸般の事情を総合的に考慮して判断していきます。
この点、免責不許可事由とは、財産の隠匿、借金の理由がギャンブルなどの浪費である場合や、過去7年以内に自己破産をしている場合です。
この免責不許可事由は、法律で決められています。
法律で決められた免責不許可事由のうち、実際によく問題になるものは、次のとおりです。
- 浪費(むだづかい)やギャンブルによって多額の借金をしてしまった場合
- 財産を隠したり、壊したり、勝手に他人に贈与したりした場合
- 破産申立てをする前の1年間に、住所、氏名、年齢、年収等の経済的な信用に関わる情報について嘘をついた上で、お金を借りたり、クレジットカードで買物をしたりしたような場合
- ローンやクレジットカードで商品を買った上で、その商品を非常に安い値段で売ってお金に替えた場合
- 破産の申立てをした日から数えて7年以内に免責を受けたことがある場合
- 裁判所や破産管財人が行う調査に協力しなかった場合
ただし、免責不許可事由に当てはまる行為があったとしても、その行為の悪質さの程度や、借金をした理由、現在の破産者の生活や収入の状況等の様々な事情も考えた上で、裁判官が総合的に考慮して、破産者の立ち直りのために、例外的に免責を認める場合もあります。これを「裁量免責」といいます。
「裁量免責」にするかどうかの判断をするために、免責不許可事由に該当する場合は管財事件になるケースが多いです。
また、2回目以降の自己破産の場合は、免責不許可事由にあたるとして多くのケースで管財事件になります。
同時廃止事件の流れ
同時廃止事件の場合、必要に応じて弁護士が裁判官と面接を行い、破産手続開始決定がなされます。
そして、概ね破産申立てから約2か月後に、免責審尋期日が裁判所で開かれます。
免責審尋期日には、原則として、申立代理人弁護士が同伴し、依頼者の方にも裁判所に出廷していただく必要があります。
免責審尋では、通常、裁判所が借金の免除決定を出すにあたり、依頼者の方(破産者)に対して裁判官が幾つかの質問をします。
例えば、「氏名や住所に変更はありませんか。」「借金の免除を求めるということで良いですか。」など簡単な質問を行います。
所用時間は5分程度です。
管財事件の流れ
管財事件の場合、必要に応じて弁護士が裁判官と面接を行い、破産手続開始決定がなされます。
そして、概ね破産申立てから約1~2週間以内に、破産管財人に就任した弁護士の事務所において、破産管財人との面接を行います。
破産管財人との面接には、原則として、申立代理人弁護士が同伴し、依頼者の方にも破産管財人の法律事務所へ行く必要があります。
ここでは、申立代理人弁護士が作成した申立書や添付資料などに基づいて、破産管財人より、借入に至った理由及び経緯、財産に関する調査等に関し、必要な質問がされます。
また、破産管財人就任後から債権者集会までの約3ヶ月の間は、破産手続をとった方宛の郵便物が破産管財人へ転送され、破産管財人の許可なく転居などができないといった制限がかかります。
よくある質問
破産手続が開始されるとどのような制限を受けるのですか。
破産手続が開始されると、破産者には、例えば次のような義務が生じたり、義務等の制限が生じます。
- 破産や免責に関して裁判所や破産管財人が行う調査に協力し、必要な説明等をする義務が生じます。
- 裁判所の許可がなければ住所や居所を移転することができなくなることがあります。
- 破産者宛に届いた郵便物を破産管財人に転送する取扱いがされることがあります。
- 株式会社の取締役、宅地建物取引業者、保険外交員、警備員など一定の職業に就くことができなくなります。
なお、破産者になっても選挙権や被選挙権を失うことはありませんし、破産者であることが戸籍や住民票に記載されることもありません。
また、免責許可決定が確定したときなどには復権し、資格や権利の制限は消滅します。
破産手続開始の決定がされた場合、債務はどうなりますか。
破産手続開始の決定がされても、債務者は当然に返済を免れるわけではありません。
返済を免れるためには、免責許可の申立てをして、免責許可の決定がされる必要があります。
この免責許可の決定がされることによって、税金や罰金、養育費などを除いて、返済を免れることになります。
なお、破産手続の申立てがあれば、原則として免責許可の申立てもあったとみなされます。
裁判所に提出する債権者一覧表に、特定の債権者だけを書かないと、不利益がありますか。
裁判所にわざと虚偽の債権者名簿を提出した場合は、免責不許可事由になりますので、免責許可決定が出ず、債権者に対する法律上の支払義務が免除されなくなる場合があります。
また、破産者が、その債権者に対する借金があることを知っていたのに、わざと債権者一覧表に書かなかった場合は、たとえ裁判所が免責許可決定を出して、他の債権者に対する借金についての支払義務が全部免除されたとしても、その債権者に対する支払義務だけは免除されません(これを非免責債権といいます。)。
ただし、債権者一覧表に書かれなかった債権者の側で、債務者について破産手続が開始されたことを知っていた場合は、非免責債権にはなりません。
尼崎の裁判所に関する情報
破産の場合は、裁判所の手続きをとることになります。
尼崎にお住まいの方が自己破産を申し立てる場合は、神戸地方裁判所尼崎支部に申し立てをすることになります。
尼崎の裁判所に関する情報は、以下です。
裁判所のHPを参照しています。
詳細は裁判所のHPをご覧ください。
〒661-0026
神戸家庭裁判所尼崎支部
兵庫県尼崎市水堂町3―2―34(JR神戸線立花駅北徒歩10分、阪急電鉄武庫之荘駅南東徒歩15分)